ゲーム感想『あつまれ どうぶつの森』
任天堂ハードから離れること約10年、Switchをゲームキューブ以来に触り、『どうぶつの森+』を友達と延々とやり続けた自分に買う以外の選択肢がなかったゲームこと、『あつまれ どうぶつの森』のレビューです。
(1)コンセプト・ゲーム性
どうぶつの森シリーズのコンセプトは明快で、オルタナティブな生活ということにあります。特に都市生活者の人間にとっては海や山に囲まれた空間で(ローンやカブという資本主義の侵略はあるものの)日々暮らしていくというところに大なり小なり魅力を感じるものでしょう。
そのコンセプトは本作でも十分に踏襲されているところで、草木や動物と戯れる生活が待っています。都市生活者には釣りや虫取りといった体験はある種理想化された子供のやることというカテゴライズになっており、エアコンの利いた室内で疑似的にできるというのは子供心にも大人心にも楽しく感じるところです。また、明らかに日本じゃ取れないものとかがいるので、そこはファンタジーとしてゲーム内でしかできない経験とも言えます。特に、魚釣りは魚影というランダム要素や釣り糸を垂らすという操作性において、よくあるRPGにおける釣り要素よりも優れているところです。
一方で、コンセプトは共通しつつも、微かな記憶をたどってになりますが、『どうぶつの森+』と比較すると、少し違うところがいくつかあります。島の地形を変更できること、家具などを作成できることなどが大きなところかと思います。(もちろんオンライン要素も追加されましたが)
これは明確に『Minecraft』などの「ビルド」系ゲームを意識してのことだと思います。素材を集めて物を作るというゲーム的リアリティを持ち込んだ要素といえるでしょう。この作品においては、島の地形変更という要素は良かったものの、家具作成はあってもなくても変わらないなという感想です。
マイナス要素としては、島がものすごく狭く感じているし、おそらく狭くなっている。離れ島も正直そこまでメリットがないし狭いので、ボリュームとしては欠けるなという印象です。
(2)ストーリー
ないです。なくてよいです。と言いつつも、たぬきちと協力して島を発展させるという最低限のものはあります。ただし、エンディングはちょっと唐突です。
(3)操作性
UIは変わらず良いですが、操作性はあまりよくない点がいくつか。特に、視点操作が十分にできないというのは今どきのゲームとしていかがなものかという印象です。家の裏にタランチュラやサソリが行ったらどないせいというのだ……。あとは、エイブルシスターズの試着室の仕様も変更してほしい。
また、評価点に挙げていた「島クリエイター」の操作も、効率的にさせてくれてもいいのではないかと思ったり。慣れるまでは埋め戻したりとかをよくやっていたので。。
(4)作り込み
作り込みという点では、生き物のグラフィックがめっちゃよいです。(ジンベイザメの一本釣りは出来るけど)リアリティしかない。ここはすごくこだわっているところで、同様に家具も細部までしっかり作り込んでいるなと思うものが多いです。
最もテンション上がったのが、博物館の展示の凝り方。水族館とかには結構行きますが、国内トップクラスの水族館の展示と同レベルの展示で、もちろんガラスのくもりとかもないので、もしどうぶつの森世界に行けたら、ずっとあそこで過ごしたいと思うレベルです。虫の方もものすごく凝っているので一見の価値ありです。
『どうぶつの森+』当時はそこまで気にならなかったけども、大人になって気になる点がいくつかあることに気づきました。
一つは地形生成の甘さ。どうでもいいですが、一つの川が二つの河口を持つとかありうる?だったり、「島クリエイター」でも地形の境界が元の草地形だったり、海岸の地形をいじれなかったりで正直ここは不満が残ります。
もう一つは出てくる生物や季節感の日本特化というところ。今作では南半球も選択可能ということで、半年ずれるだけだろうと思いつつも南半球を選択しました。やってみて目についたのは、結局出てくる生物や季節ものの類が日本固有種に偏っていること。これでは南半球在住の人たちがプレイしても日本の人たち同様の感慨を得ることは不可能になるのではないかと思ってしまいました。もちろん完全に日本というわけではなく、熱帯魚が釣れたりとかしますが、2月の夏にセミの大合唱をされても誰もピンとこないでしょう。完全にローカライズしろとは言いませんが、この点はグローバライズとして中途半端だなと思う次第です。
ゲーム性を損なう可能性もありますが、可能ならばそこまで配慮したうえで多様性を持たせる試みをしてほしかったなと思うところです。
(5)総評
色々ダメ出しっぽくなってしまいましたが、新しい要素も既存のものを壊すわけではなく、十分にシリーズの良さを引き継いだ作品であるといえます。主に過去作のファンがターゲットでしょうが、特に都市生活の皆様は一度手に取ってみるのもよいのではないでしょうか。