はじめに

こうして筆を取るのは5年、いや10年ぶりだろう。

今や、現実世界のコピーとなっている電子の海、そのうちの日本語海域は、まるで厚い氷が浮かんでいるようだ。SEOという名の浮力で浮かんでいる得体も知れない氷だ。
その海域の生態系は破壊しつくされつつあるのかもしれない。集合知はお互いに参照できてこそ価値が初めて出る。そう信じている人間としては非常に空虚な空間になっている。誰かの熱意や苦労は有効利用されることなく、底の方に消えていく。
かつてはそうではなかった。海は浅い方が海藻由来で富栄養となる。海の生き物のほとんどは海の多くをしめる水深の深い海ではなく、浅い海に生息する。誰かの神経系から発した情報は別の誰かの神経系を発火することができた。インターネット空間を私物化する情報の巨人は許されない、そういう思いもあるだろう。

それは好ましくないこと、その通りだ。しかし、そもそも自分はアウトプットで大きな情熱を持つことなく日々生きている、いち消費者だ。そのことでとやかくいう筋合いはあまりないのではないかと思う。

そこで、生産者になろうと試みている……ということでは残念ながらない。そもそも、5年前に書いていた時も人を引き付ける文章をかけたためしはないし、10年前、かつての浅かった海ですら生存活動の代謝の結果として、海を漂っていただけだ。
今度は深い海の中、マリンスノーとして沈んでいく。

 

まぁ、要は自分の感想とかをアウトプットとして、そっと海に流すだけです。